ワンピースの架け橋

わたしに対して愛想が良くないことは気になったけれど、余計なことは言わず言われたことには従って黙ってショップに立っている子でした。

休憩時間には、ぶらりと出て行って近くの立ち食いそばの店で一番安いかけうどんを食べてくるらしく、帰りにはペットボトル飲料を一本みやげにくれるので、派手な子でも悪い子でもありません。

そのビルの一坪ショップブースは小規模とはいえ集中レジなので、レジやラッピングはないのですが、販売の基本業務である体を使う動作全てがマイペースでゆっくりとしていて、未経験を克服する気はないのかな、という苛立ちを自宅で母にぶつけてしまいます。

結婚前に一年ほどとはいえ、ショップのバイトをしていた身としては、おとうさんの仕事の事務作業を少し手つだっていただけで販売未経験という彼女を入れるのはかなり迷いました。

けれど、面接には他の応募者がふたりだけでした。

デパガをやめて10年、優しい笑顔が印象的ですが白髪交じりで還暦近いおばさんと、ひとつのバイトを一ヶ月以上続いたことがない口のきき方も知らない30半ばの男性が来ただけで、時給800円での募集では、最初のバイト採用については妥協するしかありませんでした。

二人は保留で履歴書をまだ返送せず返事をしないまま、一番若いけれど無表情な由香里ちゃんを消去法で入れたのでした。

試用期間は2週間と最初に同意をもらいました。

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