私の母は生前「子どもにだけは迷惑をかけたくない」というのが口ぐせで、ことある毎に「大丈夫、大丈夫」と何でも自分で考えやろうとする人でした。
しかし62歳で重篤な感染症になり明日の命も判らないと宣告されたのに奇跡的に回復したものの、65歳で難病を患い68歳目前で亡くなりました。まだ若かった母は自分の老後について大きなイメージはなかったと思います。
いくら気丈な母でも、病には勝てず結局娘二人の世話になりました。娘としてはもう少し素直になって欲しかった。不安を隠さずに、事前に老後のことを相談して欲しかったとその頃思いました。老後への準備。私は母の苦い体験から60代で考えるのでは遅いと思っています。
早い分には越したことはないのですが、20代の人に話しても、その前に結婚・出産・マイホームというライフプランにおける三大資金が優先となるでしょう。
FPの立場としては30代~40代前半でしっかりと『老後への準備』と向き合っておくアドバイスをしたいと思います。そうすれば憂いなく、家族も幸せで平和な人生を過ごせるのではないでしょうか?
1. 老齢年金について深めてみよう
前回は年金の3つの役割をお伝えしました。
今回はその中から老後への準備の柱となる『老齢年金』にスポットをあててみたいと思います。日本の年金制度について「三階建て」の話しを聞いたことはありますか?
厚生省HP
3階部分:自分年金(自助努力) 確定拠出年金・企業年金・国民年金基金・年金保険etc
2階部分:厚生年金(企業加入) 会社員・公務員が加入
1階部分:国民年金(基礎年金) 20歳~60歳全員加入(会社員も加入しています)
2: 老齢年金1階部分:国民年金(基礎部分)
1回部分は国民だれでも(特例あり)加入義務のある年金です。20歳~60歳まで40年間支払い、世代により段階的に受け取り時期は違います。
男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降に生まれた人は65歳から受給開始となります。
国民年金の保険料は、平成29年4月~平成30年3月までは、16,490円/月。受給額は満額で779,300円。昨年より0.1%下がっています。
受給資格は平成29年8月1日から大幅に短縮され10年以上120回納付があればOK。ただし、支払い回数により支給金額が違いますので注意してください。例えば本年度の金額をベースとして比較した場合
・10年:194,825円(月16,235円)
・15年:292,238円(月24,353円)
・20年:389,650円(月32,471円)
・25年:487,063円(月40,589円)
・30年:584,475円(月48,706円)
・40年:779,300円(月64,942円)←満額★
満額に対して支払い回数が(期間)短いと上記しか受給できません。子どもに迷惑をかけないための老後準備として、どの位のお金が必要かは把握し、不足金は他の対策を立てることをおすすめします。
国民年金には「後納制度」があります
シングルマザーの中には離婚後、住宅資金や教育資金を優先にするために、年金を後回しにしてしまった人もいるでしょう。そんな人もあきらめないでください。国民年金には「後納制度」があります。
時効で納めることができなかった国民年金保険料について、平成27年10月から平成30年9月まで3年間に限り、過去5年分まで納めることができる制度です。「あと少しだったのに~」という人もいるでしょう。
一日550円貯金すれば保険料に届きます。かわいい我が子に迷惑をかけないように、準備をお願いします。
なお、実際に自分が受け取る金額の目安は、誕生月頃に到着する「ねんきん定期便」を御確認ください。
2:2階部分:厚生年金
厚生年金保険は、国民年金に上乗せされて給付される年金です。受給対象者は、主に会社員と公務員です。支払う保険料は毎月給与から天引きされており、同額を会社が年金機構へ支払ってくれています。
これを「労使折半」といい会社員にとっては大きなメリットではないでしょうか? 保険料は給与額に準じて段階的に変わり、1等級~31等級まで細かく分別されています。
・1等級:標準月額 ~93,000 まで :全額 16,104円(折半 8,052円)
・31等級:標準月額 605,000~ 以上 :全額113,460円(折半 56,730円)
※平成29年度
折半金額を会社と自分で支払っています。「給与安い」などいえなくなっていきませんか?
国民年金と違い、厚生年金は20歳未満でも社員なら納付しなくてはなりません。例えば中学を卒業して働いた人は16歳で加入している人もいますし、高校卒業後就職の人は18歳で加入します。
各自「ねんきん定期便」で確認を
この2階部分の人は様々なケースがありますので、各自「ねんきん定期便」で確認をしてください。私のケースでも下記の様な複雑な状況となっています。
高校卒業
↓
A社入社(厚生年金加入)
↓
退職後約半年無職(国民年金のみ)
↓
B社入社(厚生年金加入)
↓
C社入社(厚生年金加入)
↓
結婚のため退職(国民年金のみ)
↓
自営業者と結婚(国民年金のみ)
↓
事業が軌道に乗り法人化(厚生年金加入)
↓
離婚により退職(国民年金のみ)
厚生年金加入が「つぎはぎ状態」となっていますが、途中いつ国民年金を納付していいのか判らなくなり、年金の支払が滞っていた期間がありました。また旧体制時代に、システム化を推進する中、入力ミスがあり、A社での記録がまるっと抜けていました。
担当者の説明によると「システム化導入のため、漢字の読める外国人労働者の採用をしたところ、まれに音訓の入力ミスがあった」という、驚きの事実が発覚。私の旧姓は「田中」。
漢字の入力ミスはないが、カタカナでは「デンチュウ」となり「タナカミワコ」さんが当時の住所で検索してもでてこないというミステリアスな事件もありました。皆さんもよく確認してくださいね。
年金は夫婦で分割されます
また現在離婚を考えているかたもいるかと思います。年金は夫婦で分割されます。しかし、多くの方が間違えて解釈されていますので気をつけてください。
誤)夫の厚生年金の半額を妻がもらえる
正)収入が多い方の厚生年金を分割(多い分)することができる。
また、専業主婦だった方は(第3号被保険者)であった方からの請求により、平成20年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ、当事者で分割することができます。
3号分割についても触れた方が良いのでは?
※請求は2年以内に!
※詳細は年金機構のHPへ
3:3階部分:自分年金(自助努力》
1階は全員加入。2階は会社員と公務員のみが加入ということは、フリーランスで働いている私はどうなるの?
はい、そのような人は2階部分「厚生年金」はまるっと抜けて受給されません。ということは、65歳になったときに受け取れる老齢年金は基礎年金だけ? そうなのです。
満額でも平成29年度で月65,000円です。これでは、かわいい子どもに迷惑をかけませんか?家族の平和が崩れませんか?
そこで今、盛んに言われているのは「年金は3階部分が大事」ということです。私もかなりしつこくお伝えしているかもしれません。けれども、子どもに迷惑をかけない、家族の平和のためには3階部分の年金がとても重要となり、有無により幸福指数が大きく変わってきます。
国民に加入を呼び掛けているのが「確定拠出年金」
3階部分の自助努力の年金には、どのような種類があるのでしょう。
国がいま、国民に加入を呼び掛けているのが「確定拠出年金」です。確定拠出年金には、企業型と個人型があるのですが、後者がiDeCo(イデコ)と呼ばれる仕組みで、最近はテレビCMが流れていたりしますから、もしかしたら聞いたことがあるという方もいるかもしれません。
この年金システムは、国策と言っても過言ではなく、国から様々なメリットが付与されています。
この年金の特徴は、投資をしてその運用益を老後資金に充てて欲しいという、今までにないタイプのものなのです。日本人は投資が苦手です。
その結果、国民の経済力が低下するという事態となりました。日本では投資をギャンブルと考える一方、アメリカでは株や投資信託を行う行為は「企業を応援しその対価をいただく」という大きな考え方の違いがあります。なぜ国が金利を下げたのか。それは「預金ばっかりしてお金が動かないと、経済力が弱るのだよ」というメッセージなのです。その手始めとして、国が応援(メリット)するから投資の第一歩を踏み出してみてよ、というのが「確定拠出年金」なのです。
3つの大きなメリット
確定拠出年金は、大きくいうと下記の3つの大きなメリットがあります。
- 掛金全額所得控除
- 運用益は非課税
- 受給時にかかる税金の優遇処置
確定拠出年金の掛金は自分で決めることができます。個人事業主の場合、最高68,000円、年間816,000円まで全額所得税控除の対象となります。
またサラリーマンは、月23,000円、年間276,000円まで掛金が控除できます。運用期間に利益がでた場合、通常分離課税として20%+αが引かれますがそれも免除。さらに受給時には税制優遇のある公的年金や退職金と同様の計算が採用されます。
他にも、保険や企業が独自で採用している年金などがありますので、それぞれの商品をよく研究し、比較して、最も自分に適したものを無理のない金額で始めてみてください。コツコツ積み立てていくのが賢明です。
4. 年金を増やすには?
3階部分に加入するのも必要ですが、自分の老後を考えて厳しい状況が予測されるなら、厚生年金加入事業者へ就職することです。一種懸命に働き、少しでもお給料を増やすことが賢明でしょう。2階部分の厚生年金の役割は大きいのですから。
私のように入力ミスというイレギュラーなこともありますから、まずはご自身の加入状況をしっかりと把握されることが賢明です。日本年金機構が運営するWEBサイト『ねんきんネット』は、ご自身に関する情報をパソコンやスマホから、いつでもどこからでも確認できるサービスをしています。
かわいい子どもに迷惑をかけない、家族の幸せ、平和のために、ぜひ一度ご確認してみてください。
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