ワンピースの架け橋

作者:森内 ゆい

小2になったばかりの一人娘を登校させて、8時半には店に出勤、10時には店を開ける、仮にも店長としての始動から四日目を迎えました。

起業した、開業した、と知人や友人にメールやLINEで触れ回ったものの、彼女たちの反応は薄く、自転車で2分の一坪ショップに訪ねてきてくれたのは、まだ前の職場で面倒をみてくれた同じシングルマザーの先輩だけです。
彼女もたぶん、自分が面倒を見てきたのにうまくいかずに退職したわたしに対してなんらかの責任を感じたからでしょう。

開店二日目の午後、子ども服のリサイクルショップである我が店舗を見て
「可愛くていいね」
と言いつつ
「バリエーションは増やしたほうがいいよ」
とアドバイスをしていってくれました。

バリエーションの意味まではわからなかったけど聞きそびれました。

教えてもくれませんでしたし先輩はあまり差し出がましく口を出す性格ではなく、こちらが教えてほしいと質問しなければ指示をしないというタイプでした。

けれどこちらが指示を仰げば指導はしっかりしてくれる人でした。

そのチャンスを逃したかなと思いましたが、既に同じ職場にあらず、でありコンサル担当者を頼るしかありません。

前の借主が壁を汚したうえ破損したという理由で、そのままでいいならと破格で借りることができた一坪ブースとはいえ、元夫と義両親からの慰謝料を、開業運転資金としてはあまり無駄に使いたくはなかったので、リサイクルショップは、手元にある物を使うことから始めました。

実家からハンガーラックをもらって、商品はいずれフリマにでも出すつもりだった娘のお古を100均のハンガーに吊り、それをやはり実家から借りた車で運び込みました。

衣料品
出典:pixabay.com

双方の親が競争してブランド物を買い与えてくれたおかげで非常識な数を誇り、ほとんどを処分せずに置いてあった子ども服は、離婚して実家に戻るときに一番かさばる大量の荷物となっていて、受け入れてくれた親たちを悩ませましたが、思わぬ戦力となりました。

わたしの休憩時間も必要で、バイトをひとり最低時給で募集したところ、高校を出てのらくらしているという20歳の女の子が来ました。

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