離婚しても子どもを真ん中に 離婚後の新しい家族のカタチ

みなさん、離婚後、元夫との関係はどのようにしていますか。
子どもを介して関わりがある人、顔を合わせることも嫌な人など事情によってそれぞれかと思います。
今回は、子どものために元夫が自宅で食事をしたり泊まりにくることを継続している希さん(仮名)に お話を伺いました。




離婚への経緯

希さんは、現在小学校高学年の息子さんを育てる30代後半のキャリアウーマン。
約8年前に、性格の不一致や経済面での理由から協議離婚をしました。当時息子さんは幼稚園生。
希さんから申し出た離婚協議は、途中親権でもめた時期があったものの、最終的に夫側が譲ることで合意に至ったといいます。

話し合いを重ねた円満離婚

離婚を考えるほどの相手となぜ話し合いができたのかと尋ねると、「夫婦ですからお互いの性格が誰よりもわかっています。もめたら時間をおくことが賢明だとお互い理解していたので、何度となく時間をあけて冷静になった後であらためて話し合いをすることを繰り返しました。あと、なにより、元夫がきちんと私の話に耳を傾けてくれる人だったのもよかったですね。」と答えてくれました。

外部からの情報に振り回されなかった

話し合いの間、お互い離婚の専門書を読んだり誰かに相談したりせず、すべてふたりで話し合って納得して決めていったという希さん。

知識が先行して、夫婦で責め合ったり勝敗を決めたりするのではなく、子どもの気持ちを 中心に当事者である夫婦でしっかり向き合って話し合うことができたのが、このご夫婦が円満離婚に至った秘訣だったのでしょう。

面会交流という言葉は使ったことがない

公正証書をつくる際に初めて「面会交流」という言葉を知り、以来一度もこの言葉を使ったことがないそうです。離婚しても子どもが親と会うことは当たり前のことであり、特別なことではないという認識でいるため「面会交流」という言葉を使う必要性がない様子が伺えます。

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復縁を期待する息子

離婚直後から、週末に元夫が自宅に来て夕飯を一緒に食べ泊まって帰るという生活がスタート。
あまりに自然に元夫と過ごす様子を見て、息子さんはわざと「パパとママ、一緒に手をつないで」と間を取り持とうとするなど、復縁するのではないかという期待に胸を膨らましていた時期もあったそうです。

また、パパが帰る時にとても悲しそうにしている息子さんの様子を見て、希さんは「中途半端なことをするより会わせない方が子どものためなのではないか。」と悩んだこともあったことも。
しかしながら、離婚しても両親からの愛情をたくさん伝えることが大事だという思いが変わることはありませんでした。

子ども扱いせず説明する

希さんがいつも心がけていること。それは「きちんと隠さずに説明すること」。
息子さんが復縁を期待していそうな時には、「パパとママは一緒に住むと喧嘩しちゃうからまた結婚することはないけど、ふたりともあなたのことが大好きで、一番に考えている からなにも心配しないでね。」と丁寧に伝えることを繰り返しているといいます。

彼氏のことをどのように伝えるか

前向きで息子さんのきもちに真摯に向き合う希さんにも、頭を悩ませる時期が訪れます。
それは、希さんにパートナーができたときのこと。息子さんが小学校低学年の頃でした。

不安定になる息子

息子さんに気づかれないように付き合い始めたものの、ある日息子さんがメールのやりとりを見てしまい、子どもながらにママが好きな人がいるということを理解した瞬間があったそうです。
その頃ちょうど仕事も忙しく帰りが遅かったことも重なり、息子さんは学校で暴言を吐くなど、不安定な時期が続いたといいます。

隠し事をしない

以来、息子さんはメールを頻繁に見るようになったり、電話をしているとわざと近寄ってきたりといった行動が続き、希さんはきちんと説明をしなくてはいけないと決意します。

「ママはあなたが一番大好き。あなたがいやなら再婚もしない。今、ママはある男性に仕事の相談に乗ってもらったりして助けてもらったりしているの。だからこれからもメールや電話をしたりするかもしれない。その時には必ずあなたに『これから電話していい?』っ て確認するようにする。」

そして、隠し事が嫌いな息子さんに対して、「今まで内緒で電話したりしてごめんね。」と正直に謝ったそうです。

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子どもは全部わかっている

小学校高学年になり、息子さん自身が塾などで忙しくなったのが転機となったのか、最近では、「ママが彼氏をつくりたいならいいよ。」「子どもがほしいならつくっていいよ。」と言ったり、会ったことはないもののパートナーのことをニックネームで呼ぶなど、存在を肯定するような発言が増えたといいます。

「本当はパパと復縁してほしいと思ってるだろうけど、息子なりに理解をしてくれているんだと思います。今では、突然『ぼくは全部わかってるんだよ』とニヤっと笑いながら言ってくることがあり、ドキッとさせれられます。」

元夫の再婚

手を取り合う
出典:unsplash.com
話を進めていくうちに話題は元夫さんにも及ぶと、最近再婚されたとのこと。
希さんは、祝福の気持ちを伝えると同時に、息子の受験が終わるまでは話さないでいてほしいとお願いしていて元夫さんも理解をしてくれているそうです。

新しい家族のカタチ

元夫さんもまた、息子さんのことを第一に考えている方。そして、お相手の女性も、元夫さんが息子さんや希さんと今まで同様宿泊を交えた交流を行うことに、理解を示してくれているそうです。

希さんは、今後息子さんが元夫さんの家に遊びに行ったり奥様と交流をすることを前向きに捉えています。息子さんが自由に行き来する環境を整えてあげたいという思いからなのでしょう。
そして、希さんがいずれ再婚した折には、息子と私たち夫婦、元夫の夫婦の5人が一堂に会せるような関係になりたいと話していました。

息子の発言から気付かされること

あるとき、息子さんにこんなことを聞かれたそうです。「パパに彼氏のことを言っていい?」
頷くと、3人でいる時に早速パパに「ママ彼氏いるんだよ」。
そして、「ママが結婚した らパパはぼくと会えなくなるかもしれないよ。」と言ったそうです。
きっと新しいパート ナーと一緒に住むようになったらパパが来づらいと思ったのでしょう。

元夫さんは「ママの彼氏が家に行ってよければパパは行くよ。」、
希さんもこう答えました。「ママもあなたが寂しくないように、パパにいつでも来てもらえるような人を選ぶから大丈夫。」

子どもは先々のことも想像し、親が気づききれない不安を抱えていることも多いのでしょう。その不安を取り除くためにも、こうやってオープンに質問ができる家族のカタチをつくることが大切ですね。

これからのこと

今後どうしていきたいかと尋ねると「今のバランスがとても心地よい」とのこと。
「以前は子どもがほしくて再婚したいと思ったこともあったけれど、自分の年齢も含め正直悩んでるところです。」

元夫との関係

「今バランスのよい関係を保てているのは、私から持ちかけた離婚にもかかわらず、ひとりで育てる苦労を理解してくれる元夫のおかげ。」と語る希さん。

元夫さんは「いつも息子を元気に育ててくれてありがとう。」と感謝の気持ちを伝えてくれたり、時には先に自宅にいて食事の用意をしてくれることもあるとのこと。そのおかげで希さん自身が救われていることも多々ある様子でした。

お互い感謝し続けるという基盤があるからこそ、それぞれの生き方を尊重し合いながら子育てを協力し合える関係を保てるのでしょうね。

子どもの成長に合わせて柔軟に

息子さんへの関わり方については、「子どもの成長によって変わっていくことなので、今決めるのではなく、その時々で息子を中心とした方法を柔軟に考えていきたい。」

そして、「これからも、常にパパからもママからも『あなたが一番』と伝え続けていきます。スキンシップを交えてきちんと言葉で伝えることが大事。また、パートナーのことなど大人の事情だと敢えて話さないのではなく、わかるように隠さず説明することも続けていきます。子どもなりに理解をすれば、パパやママに好きな人ができたとしても、自分が一番愛されていると自信をもって過ごせるように愛情を伝えていきたいですね。」と力強く話してくれました。

さいごに

離婚を経て、元夫とよりよい関係を築き上げ、新しい家族のカタチを自然につくりあげている希さん。
お話をお伺いしていて、「子育ても夫婦もマニュアル通りにはいかない。相手の様子をよく見てきちんと話をすること。隠し事をしないこと。」これが、子育てにおいても夫婦においても大切であることをあらためて知る機会になりました。

みなさんも、子どもにとって最善の「新しい家族のカタチ」考えてみませんか。

ABOUTこの記事をかいた人

しばはし聡子

中学生の息子と暮らす子連れ離婚経験者。面会交流に後ろ向きな思いを乗り越えた経験を生かし、離婚後の子育てや相手方との関わりで悩む親、そして子どもの一助となりたい思いから「一般社団法人りむすび」を設立。 現在、個別相談や面会交流支援に加え、講演や執筆を通して共同養育普及活動を実施中。

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