娘は学童保育からあぶれ、実家での留守番が退屈で嫌だと学校が終わるとランドセルを背負ったままで店に来ます。
「これ、あたしの服ばっかり!
おじいちゃんやおばあちゃんに買ってもらったのに、全部売るの?
あ!それ、5歳の誕生日にパパにもらったワンピースだよ!
絶対だめ!」
と、初日にそれを手にしていたお客さんの前で大声で言ってしまい、必死で制止してお客さんに謝罪しましたが、白けた様子のお客さんはブランドのワンピースを放り出して帰ってしまいました。
おしゃべりすぎる娘に店には来ないようにと言いましたが、ちょうど近所で子どもに声をかける不審者情報が多く出始めた頃と重なり、どうしても実家では退屈だという娘が学童保育にも友だちの家にもいられない以上は店に置いておくしかなくなりました。
ただ、あのようなことはお店をするのにあまりに非常識な発言であるし、
「ママは生活するのに必要なお金を稼ぐのにお仕事を始めたんだから、もう小さくなった服を売るのは仕方ないんだから。
愛美だって買ってほしいものたくさんあるでしょ?
それにはママがお仕事するしかないの」
とトイレに娘を引きずっていって言い聞かせて半泣きの娘をなだめ、半ば可哀そうな気持ちになりました。
問題のワンピースは、元夫から誕生日にもらったシックな1点もののワンピースで、わたしには不倫をした元夫の権化のようなものでしたが娘にはお気に入りの服だったのです。
結局それだけは売ることも娘の言いなりに家に持って帰ることもできず、宙ぶらりんな気持ちのままショップの片隅に箱に入れて片付けておくことにしました。
娘は
「バイトのおねえちゃんの由香里ちゃんが大好きだからお店好き」
と言ってもいるので、それが学校から店に直行する大きい理由でもあったのでしょう。
元夫の実家には由香里ちゃんと同じくらいの姪がいて、娘はその姪にとても懐いていたのですが、由香里ちゃんはあまり喋らない性格も地味で質素な服装も似ていることもあり、娘は懐かしかったのかもしれません。
由香里ちゃんは商品の整頓は丁寧にする子で、お客さんが来るとちゃんと姿勢を正して立っている子ですが、お客さんが帰ると乱された古い子ども服をまた黙々と丁寧に整頓します。
娘は、その間中由香里ちゃんにまとわりついていて年の離れた姉に妹が懐いているようでもあり、由香里ちゃんは特に愛想よく相手をする様子はないのですが、店長であるわたしの目を気にせず甘やかすことなく適当にあしらっていました。
子ども服古着の店にそれを着ていた子どもがいる光景、それはそれでいいかもとほほえましく思い、放置しておくことにしました。
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